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2008年2月20日 (水)

僕は、春。

 まだかまだかと待ちわびる春は、まだ来ない。冬の匂いは影を潜めて、幾分ゆるやかな陽射しの世界が増えてきたけれど、まだ春と呼ぶには遠い。

 晩冬。そうかもしれない。晩冬という言葉の響きが、最も今の季節には近いかもしれない。どことなく、暗くひそやかなイメージが膨らむ。言うなれば、いつもの帰り道の途中に、ふと街灯が途切れていることに気付き、さらにはふと自らの孤独にも気がついてしまい、心がどこかに分散してしまうようなイメージ。いささかオーバーな気もするけれど、表現上に嘘はない。

 季節にはそれぞれ匂いがある。冬の匂いは影を潜めたのだけれど、細分化した意味での冬の匂いはまだ街を漂っている。

 春夏秋冬。ひとまずの括りはこの四つ。そしてそれぞれがさらに三つずつに細分化される。つまるところ一年の月の数と等しくなる十二の匂いが、世界を占める。もっともっと細分化することも出来るけれど、それはもはや意味がないように思える。厳密にしてしまえば、一日ずつ、あるいは一時間ずつでも匂いは異なるものなのだ。

 「好きな季節はいつですか」

 例えばそういう問いが投げかけられれば、僕は間違いなく春と答える。淀むこともなく、惑うこともなく、はっきりと確かな響きで春と答える。そしてまた、自らが同様の問いを投げかけた際には、相手が春と答えを導くとなぜか心が和らぐ。

 「春は好きですか」

 こう問うのは、実は野暮だ。春はおかしな季節で、おかしな事件や人も増え、いつも以上に陽気で、その空気感を少しばかりいぶかしく思う人もいるけれど、全くもって春など好かない人間に出会ったことはない。

 「君はどうだろうか」

 柄にもなく、そんなことを考える。僕はいつも出来る限り多くのことを考え、出来る限りそれぞれにバランスよく重きを置くようにしている。だからこそ、必要な時に自らの頭の中で混乱を招くこともあるけれど、それが僕の考え方だから仕方がない。マグロが常に海を回遊するようなものだ。僕は常に思考の中を回遊する。

 しかしながら、今回のこの考えだけはどうも異なる。「君はどうだろうか」という問い、突き詰めて言えばその問いの「君は」という部分に、随分と重きを置いてしまっている。

 春が好きだったら良いだろうな、と思う。けれどたぶん、それは違う。

 「僕は君が好きだ。君はどうだろうか」

 突如として、春の思考を飛び越えて、そんな思考に達する。いかにも幼稚な昇華であり、いかにも大切な昇華でもある。

 春の匂いが訪れるまでに。春を笑って過ごせるように。

 きっとこの思考は姿を変え、具体的な事象として動き、暗闇の中で春を待つ。

 静かな息吹だけを携えながら、進む。

 確かなタイミングと、確かな心を、合わせる。

 「好きな季節は、いつですか」

 僕は、春。

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 春に関する何かを書きたいと思って、ただつらつらと書き連ねた言葉達。

 冬の彩から春の彩に変わる。冬の匂いから春の匂いに変わる。冬の心から春の心に変わる。

 今年の春は、良い春になれば良いなぁと、想う。     circus

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